接遇は、日常の業務や生活における人との接し方において、基本となるマナー柱です。接遇の5原則である挨拶・身だしなみ・表情・言葉遣い・態度は、それぞれ相手に対する敬意と心遣いを形にする物です。
これらを意識して行うことで、良い人間関係を築き、尊敬や信頼を得ることができます。しかし接遇マナーの難しさは正解が存在しないことだと思います。十人十色でいろんな個性のお客様と向きあい、その人の気持ちや状況に寄り添ったサービスをタイミングよく、時に先読みして提供することが求められるからです。
私も学生時代や新人研修で接遇について学んできました。学生時代から就職してかれこれ20年ほどになりますが、いまだに試行錯誤している日々です。学生さんや新人さんはなおのことだと思います。
『接遇5原則』と言われるマナーのポイントを意識するだけで、初心者でもスキルを伸ばせると思います。
この記事では、接遇マナーの基本である『接遇5原則』や、接遇と接客との違いについて解説していきます。最後まで読むことで接遇マナーについて理解が深まり、スキル向上に役立てることができると思うので是非、参考にしてください。
接遇マナーとは?
接遇の「接」は、つなぐ、受け取る、接するなどの意味があります。。「遇」は、もてなすという意味です。この”もてなす“とは心を込めた対応のことです。「接遇」とは、『相手を理解し適切に迎える対応』のことを言います。つまり接遇は、お客様に対しておもてなしの気持ち(心を込めた対応)を持って、適切な態度や言葉遣い、マナーで接することを意味します。いくら自分が心を込めたつもりでもお客様(相手)がそれを感じてなかったら意味がありません。そのために相手の立場になって考えながら対応していく必要があります。
接とは、
意味
①つぐ。つなぐ。「接合」「接続」「密接」 ②ちかづく。ちかよる。「接戦」「近接」 ③会う。まじわる。もてなす。「接待」「面接」 ④受ける。受け取る。「接収」「接種」
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遇とは、
意味
①あう。思いがけなくであう。「奇遇」「遭遇」 ②もてなす。あつかう。「待遇」「優遇」 ③たまたま。おりよく。 [類]偶
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せつ‐ぐう【接遇】 の解説
[名](スル)もてなすこと。応接すること。
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接客との違い
接客と接遇は、基本的な意味が異なります。接客はお客様に対して対応することを意味する言葉です。相手に対してマナーを守ってサービスを提供します。
接客:名](スル)客をもてなすこと。「笑顔で—する」
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接遇は、『相手を理解し適切に迎える対応』を意味しますす。接客の要素も含む広い概念ですが、心を込めたサービスのことです。お客様の気持ちを汲み取り一人一人に合わせたサービスを提供する必要があります。
簡単に言うと、接客は売り場の案内や支払い対応などの基本的なサービス提供することで、接遇はお客様の気持ちや状況を把握した上で、最適なサービスを提供することです。
接遇が必要とされる理由
どの業種もそうだと思いますが、接遇を重視して取り入れようとしているのは、接客を行う販売業やサービス業だけではなく、医療や教育・コンサルティングなどといった多岐に渡る業種においてニーズが広がり、注目されています。その理由は以下で紹介します。
お客様の満足度の向上につながる
必要最低限のサービスしか提供しなければ、他でもいいと思われます。親切・丁寧・思いやりのある態度で接することで、お客様の『他では得られない満足度』が上がり、再来店や継続利用につながります。
逆の立場で考えると、すごく美味しい料理屋さんに行っても対応がひどかったらリピートしたと思いませんよね?
飲食店だけでなく医療、介護サービスでもそうですが、たくさんあるサービスの中で選ぶ基準にはその場所の雰囲気やスタッフの対応・丁寧さ、思いやりなどの接し方などで次に繋がるかどうかが決まると思います。
お客様との信頼関係を築ける
相手を理解することで、適切な対応が可能になります。そうすると、相手とは信頼関係が生まれます。逆の立場で考えてみてください。自分が客側で一度不快に感じる対応をされると、相手を不信感を抱いて『あそこの店は対応が悪いからもう行かない』ってなりませんか?
特に医療や介護現場では信頼関係が大切です。リハビリや看護・介護では、信頼関係が築けてないと、拒否に繋がるケースが多いです。
コミュニケーションがスムーズになる
接遇のスキルが身に付くことによって、お互いを気遣うことができるため関係性が深まります。これは、お客様だけではありません。職員やスタッフ間においても同様です。職員間でのコミュニケーションがスムーズになると、職場全体の雰囲気も良くなります。その雰囲気の良さは、お客様にとっても居心地の良さにもつながります。
医療や介護現場でも信頼関係を築くためにもコミュニケーションの大切さを感じます。また、職員間がしっかりコミュニケーションが取れていると雰囲気も良くなり他職種との連携もスムーズにいくことで利用者様や患者様をしっかりサポートできると思います。
接遇5原則
接遇マナーには5つの原則があります。接遇マナーを身につける際のポイントとして、この5つを常に意識すると効率的に接遇スキルを高めていけると思います。
①挨拶
挨拶は、コミュニケーションの基本です。相手にはっきりと聞こえる明るい声で挨拶しましょう。また、挨拶は基本的に自分からするものです。第一印象が良いと、その後の対応もスムーズに進めることができます。
挨拶の際に気を付けるポイントは、相手に体を向け、目を見て、聞き取りやすい言葉で挨拶することです。挨拶に加えて「今日は天気がいいですね」など一言添えるのも状況によっては効果的です。多忙な時ほど挨拶が雑になりやすいので、忙しい時ほど丁寧な挨拶をするよう心がけましょう。
最後の挨拶も大切です。素晴らしい対応をしても最後がいい加減だとお客様の満足度も下がります。逆に途中で不手際があっても最後の挨拶が丁寧だと、好感度が多少持てます。しっかり心を込めて「ありがとうございました」と挨拶しましょう。
身だしなみ
身だしなみとは、相手に考慮して自分の身を綺麗にしたり、身につけるアイテムを決めたりすることです。
髪型は清潔感を重視します。
服装はTPOや業種に合わせて最適なものを選びましょう。
また、爪やニオイなどにも配慮する必要があります。
接遇における身だしなみを考えるポイントは、おしゃれとまったく違うことを理解することです。おしゃれは自分を魅力的に見せることを優先してますが、接遇は相手に不快な思いを与えないようにすることが優先となります。
③表情
初対面で第一印象を決めるのは表情です。接遇においては明るい笑顔を作ることが特に重要となります。明るい表情でお客様に接することでお客様が好印象を持ち、笑顔で返してくれる可能性が高まります。
普段の表情は年齢を重ねるごとに顔に刻まれます。プライベートでも、常に自分の表情を意識することが大切です。
④言葉遣い・話し方
接遇は敬語が基本です。その上で相手の年齢や立場に応じた言葉を使います。特定の年代にしか通じないような言葉の使用は控えるなどの配慮も必要です。
敬語であっても不自然な表現や必要以上にへりくだった言葉遣いは相手に居心地の悪さを感じさせたり、無礼になったりするので注意しましょう。また、敬語自体に慣れていないと言葉が上滑りして聞こえるものです。
言葉選びは難しく堅苦しい言葉遣いで相手は距離を感じてしまう可能性もあります。しかし、友達や家族との話し方では距離は近すぎて不快に思われたり失礼に当たります。相手の状況などに応じて臨機応変の対応が必要になると思います。正しい敬語や言葉遣いをしつつ、相手との距離を縮める話し方を目指しましょう。
⑤態度・聞く姿勢
態度は、歩き方や立ち方、物の渡し方などの立ち居ふるまいのことです。
人は自分の態度のくせになかなか気づくことができません。例えば姿勢が悪い、目をあまり合わせない、といったクセがあると良い印象は与えられないです。こういった小さなポイントは大きなクレームに発展しづらいため、ずっと改善されないままになる可能性があります。態度を改善するのは難しいので、日頃から以下のポイントは意識して丁寧な立ち居振る舞いを心がけましょう。
立つときは踵を揃える
背筋を伸ばす
相手の目を見て話す
聞く姿勢
何より、気持ちが自然と態度に現れてしまうものなので、お客様に対して敬意をもって接することを忘れないようにしてください。
医療・介護の現場だけでなく、プライベートでも態度と聞く姿勢は必須だと思います。この二つを持つことで相手が安心感を持ち、真意まで確認することができます。
まとめ
どの職業も同じだと思いますが、接遇マナーがサービス全体の印象に大きな影響を与えます。
接遇の基本はお客様の思いやる心です。接遇を身につけることはお客様への敬意です。接遇5原則(挨拶・身だしなみ・表情・言葉遣い・態度)を理解し、日々の仕事や生活で実践し、接遇マナーを向上させていきましょう。
接遇マナーを身につけることで仕事だけでなく、プライベートでも良い人間関係を築き、尊敬や信頼を得ることができると思います。私も20年医療や介護の現場でくさんの方と接してきて関係が築けることで、いろんな事が円滑に進んでいくことを経験しました。
接遇マナーの向上は自分の自信にもつながります。是非、取り組んでいきましょう。