肩甲骨は、腕の上げ下げなどの肩の動き、体のバランスなどに重要な役割があります。現代人の生活習慣で、スマートフォンやパソコンなどの使用で長時間同じ姿勢で過ごしたり、車の使用などで動く機会がなく運動不足だったりしがちです。そういった生活の習慣で姿勢が悪くなり、肩甲骨の肩こりや肩の上がりが悪くなるなどの不調につながるといわれています。ここでは肩甲骨について動きが悪くなることでのデメリットと肩甲骨の動かし方、実際に動かしてからの体験談を紹介したいと思います!
肩甲骨とは
肩甲骨の役割 ー肩甲上腕リズムー
肩甲骨は、主に腕を動かす際に上腕骨と肋骨を結ぶとても大切な役割を持つ骨です。肩を上げると上腕骨に対して肩甲骨も動きます。この上腕骨と肩甲骨の動く比率の割合は約2:1と言われています(肩甲上腕リズム)。
肩関節が移転運動における上腕骨と肩甲骨の関係性である肩甲上腕リズムは、若年者では3.5:1の割合となった。高齢者では肩甲上腕リズムじゃ4.4:1の割合となった。肩関節外転角度の増加に伴う肩甲骨の動きは高齢者の方が小さくなっていた。田中らは、幼児と30歳代、60歳代で上肢挙上時の肩甲骨の動きを比較した結果、その動きは加齢に伴い減少していることを報告し、その結果を加齢による可動性の低下、柔軟性の低下、筋力低下が要因となっていることを考察している。また篠田は、骨盤後傾位が肩甲上腕リズムに及ぼす影響を考察しており、その中でも骨盤後傾位に伴う連鎖として腰椎後弯や肩甲骨外転及び前方傾斜の増大が生じた結果、肩甲骨の上方回旋角度が減少し上肢挙上角度も減少したのではないかと推察していた。
若年者と高齢者における肩甲上腕リズムの比較 中村壮大、勝平純司、村木孝行、松平浩、黒澤和生 理学療法科学31(4):547ー550.2016
肩甲骨の正常の位置
肩甲骨は、三角形の形をした骨で2つの面(前方、後方)と3つの縁と角を持ちます。肩甲骨の正常の位置では、第2肋骨から第7肋骨の高さに位置しています。上角は第1胸椎棘突起に相当しており、肩甲棘の内側端は第3胸椎棘突起のレベルにあります。肩甲骨の内側縁または脊椎緑は棘突起線上から5〜6cmの距離にあり、下角は第7〜8胸椎棘突起のレベルにあります。
カパンディ 関節の生理学 上肢 原著第6版 AIKAPANDJI 著 塩田悦仁 訳
肩甲骨の動く方向
ざっくり説明すると肩甲骨の動きは上に上げる動作(挙上)、下げる動作(下降)、内側に動かす動作(内転)、外側に広げる動作(外転)、上と外側へ同時に動かす動作(上方回旋)、下と内側へ同時に動かす動作(下方回旋)があります。これらは側方の動きと垂直の動き、回旋の動きの3つがあります。実際に3つの動きは常にさまざまの程度で互いに複合して動きます。
肩甲骨を上に上げる動き(挙上)
肩甲骨を上方に動いて胸郭から離れます。肩甲骨を挙上する筋肉は、僧帽筋上部繊維、菱形筋、肩甲鋸筋が働きます。
新動きの解剖学 ブランディーヌ・カレ・ジェルマン著 科学新聞社出版局/翻訳(※1)
肩甲骨を下げる動き(下降)
肩甲骨は下方に動き胸郭に近づきます。肩甲骨は下降する時に働く筋肉は、僧帽筋下部繊維と前鋸筋の下部です。
(※1)
肩甲骨を内側へ動かす(内転)
肩甲骨を内側へ動かし背骨(脊柱)に近づきます。肩甲骨を内側に動かす際に働く筋肉は、僧帽筋と菱形筋です。
(※1)
肩甲骨を外側へ動かす(外転)
肩甲骨の内側(内側縁)が背骨から離れていく動きです。肩甲骨を外側へ動かす際に働く筋肉は、前鋸筋、小胸筋、(僧帽筋上部繊維)です。
(※1)
上方回旋・下方回旋
肩甲骨の上1/3部分に凸状部分を軸に肩甲骨の下の尖った部分が内側へ回旋する動き(下方回旋)と逆に外側へ回旋する動き(上方回旋)ます。これは鐘のような動きまします。この動きのおかげで腕の可動性が増します。下方回旋の時に働く筋肉は、菱形筋と肩甲挙筋、(僧帽筋下部繊維、小胸筋)です。上方回旋の時に働く筋肉は、前鋸筋、僧帽筋上部繊維です。
(※1)
肩甲骨の動きが悪くなると・・・
肩の可動範囲が狭くなる
肩甲骨と上腕の動きは筋肉や靭帯で連結しています。また肩甲骨と上腕は連動して動くため肩甲骨の動きが悪くなることで肩関節の可動範囲が狭くなり、スポーツや生活動作での動きに制限が生じる可能性があります。
年齢を重ねると肩の動きが悪く上がらなくなる方も多くなります。文献でも幼児と30歳代、60歳代で上肢挙上時の肩甲骨の動きを比較した結果、その動きは加齢に伴い減少していることを報告しています。原因は加齢による可動性の低下、柔軟性の低下、筋力低下が要因となっていると言われています。
姿勢不良 猫背
肩甲骨が外側に開いたまま(背骨から肩甲骨が離れいる状態)の姿勢が続くことで、筋肉が引っ張られすぎたり前の筋肉は丸まっているので筋肉が縮まった状態になりコリや筋力低下の原因になります。悪い姿勢が続くのは見た目が悪くなるだけでなく、呼吸が浅くなるなど他にも問題が生じます。姿勢が悪くなることで転倒するリスクも高まります。
正しく理想的な姿勢を取り戻す姿勢の教科書 理学療法士・医学博士 竹井仁著
不調の原因に
肩甲骨周りが硬くなり動かなくなると、筋肉も硬くなり血行が悪くなったり常に収縮した状態になると緊張が高い状態が続き痛みや肩こりを感じやすくなります。
その他
姿勢不良が継続すると呼吸が浅くなり、眠りも浅くなり不眠になったり、それに伴いイライラしたり集中力が低下したりします。
肩甲骨の動かそう やり方
肩がすくみ、巻き肩の私は、30代前半時代両手が痺れて肩こりもひどく頭痛持ちでした。痺れが出てすぐに病院へいき運動指導を受けて、行い今では両手の痺れは無くなり頭痛も以前に比べ減りました!現在は毎日ストレッチポールでの運動、ストレッチは欠かさず行っています。やはり筋肉を動かすことは血行が良くなるので、不調の改善につながります。骨は筋肉が付着しているので常に引っ張られたりすることで痛みの原因になったりします。
姿勢で伸ばされている部分の筋肉は鍛え、縮んでいる筋肉はストレッチで伸ばしてあげて筋肉のバランスを整えて上げることで骨の位置も正常の場所に戻ることにもつながります!
肩をゆっくり回そう
手を肩に置いて、肘を出来るだけ大きく回していきましょう!肘が後側を通る時に、肩甲骨は出来るだけ背骨に近づけるように意識しながら行いましょう!内から外回りで回したら次は外から内へ回していきましょう!10回づつ回るだけでも、かなり軽くなります。
ストレッチポールを使い動かしていく(ない場合は、バスタオルを丸めて行うのもOK 出来るだけ硬い方が良いです。)
前へならえの状態から天井に指先を伸ばすと肩甲骨を背骨に寄せる動作を繰り返す(肩甲骨の外転・内転を繰り返す)
開始肢位:ストレッチポールの上に仰向けで寝て、出来るだけ頭が出ないようにしましょう。お尻がストレッチポールギリギリのところに座って横になると良いです。
①ストレッチポールに横になったら手をあげて(前にならえをします)、指先を天井の方に伸ばしていきます。
②伸ばし切ったら次は肩甲骨を背骨に近づけるようにしていきます。
この動作①と②を繰り返していきます。呼吸は止めないようにして行います。
手を横に開き上下と動かす
開始肢位:ストレッチポールの上に仰向けで寝て、出来るだけ頭が出ないようにしましょう。お尻がストレッチポールギリギリのところに座って横になると良いです。
手を横に開き、頭の上からお尻の方まで手を大きく円を書くように動かしていきます。
肩甲骨を内側へ寄せる ※ポールを挟む
開始肢位:ストレッチポールの上に仰向けで寝て、出来るだけ頭が出ないようにしましょう。お尻がストレッチポールギリギリのところに座って横になると良いです。
①手を横に開いた状態になる。
②肩甲骨を寄せて背骨に近づける※ポールを肩甲骨で挟むイメージで行う。
猫背の人は肩甲骨が背骨から離れてしまっており、内側に寄せるという筋肉が弱くなります。しっかり内側へ寄せるようにすることで肩甲骨が外側へ開いた状態から元の位置に戻し猫背の改善に繋がります。
両手に痺れが出てた時にリハビリでこの運動指導を受けて行い痺れが軽減しました!
ちなみに、頭をゆっくり右・左とする運動指導も受けて行っていました!
開始肢位の状態から正面をみた状態から、右を見て左を見てをゆっくり繰り返していきます。
ストレッチポール上で深呼吸する
開始肢位は全部同じです。ストレッチポールの上に仰向けで寝て、出来るだけ頭が出ないようにしましょう。お尻がストレッチポールギリギリのところに座って横になると良いです。
腰部分がストレッチポールから離れないように背骨でストレッチポールを押した状態を保ちます。そのまま鼻から息を吸います。その際にお腹が膨らむように行っていきます。分からない方はお腹と胸に手を当てておきましょう。
ゆっくりと口をすぼめ息を吐いていきます。その際にお腹が凹んでいくようにします。それをゆっくり3〜5回繰り返していきます。余裕がある人は、息を吐くときに肩を下へ下げるように意識しながら行っていきましょう!
ストレッチポール上で行うことで、胸が広がった状態になります。猫背の方は胸部分の大胸筋という筋肉が短縮した状態になってしまうので、その筋肉が伸びていくため胸郭の可動性も広がりやすくなります。実際に文献でも報告されています。
ベーシックセブンは胸郭拡張性を増加させることが確認されている。体幹可動性は胸郭により抑動されて入り、胸郭の可動性が増加したことで体感後屈角度の増加が得られたものと考えられる。1日2回、1週間ストレッチポールを用いたエクササイズを行うことで胸郭の可動性が向上すると報告した。
ストレッチポールを用いたエクササイズが健常男性の体幹後屈可動域及び背臥位圧分布に及ばす即時効果:無作為化対象研究 理学療法科学28(6):829-832、2013 伊藤一也、増田圭太、蒲田和芳
まとめ
普段スマートフォンやパソコン作業など長時間同じ姿勢で過ごす時間が長くなり姿勢が悪くなっている方が増えています。不良姿勢で過ごす時間が増えることで、筋肉が常に伸ばされた状態だったり逆に縮んでいる筋肉などアンバランスになることで見た目の姿勢が悪くなるだけでなく、コリや痛みなどの不調の原因になります。
しっかりと動かして上げることで、血行が良くなります。縮んでいる筋肉を伸ばし伸ばされて筋力が発揮しにくくなっている筋肉を鍛えて上げることで筋肉のバランスを整えて上げることで見た目だけでなくコリや痛みの改善も期待できます。
私も以前は、両手に痺れも出るくらい肩周りがカチカチで偏頭痛もあり辛かったです。しかし、動かしてあげることで、血行も良くなり弱い部分も鍛えてあげることで筋バランスも整い不調が改善されました!
姿勢が良くなると、見た目のラインが綺麗に見えるので、少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。
引用文献:新動きの解剖学 ブランディーヌ・カレ・ジェルマン著 科学新聞社出版局/翻訳
カパンディ 関節の生理学 上肢 原著第6版 AIKAPANDJI 著 塩田悦仁 訳
若年者と高齢者における肩甲上腕リズムの比較 中村壮大、勝平純司、村木孝行、松平浩、黒澤和生 理学療法科学31(4):547ー550.2016
ストレッチポールを用いたエクササイズが健常男性の体幹後屈可動域及び背臥位圧分布に及ばす即時効果:無作為化対象研究 理学療法科学28(6):829-832、2013 伊藤一也、増田圭太、蒲田和芳
図解関節・運動器の機能解剖上肢・脊柱編 J .CASTAING J .J .SANTINI 共著 井原秀俊、中山彰一、井原和彦 共訳
※痺れや痛みが強い場合など、いつもと違う感じがあれば病院受診をお勧めします。