肩甲骨はいろんな方向へ動かすことができます。肩甲胸郭関節での肩甲骨の運動は、胸鎖関節と肩鎖関節の複合することで可能にしています。
しかし、肩甲骨周囲筋の筋力低下や筋緊張の低下や緊張の低下などにより、主動作筋と拮抗筋の力関係がアンバランスになり不良な姿勢や肩甲骨の正常な位置から逸脱し動作に制限が出たり痛みが生じる可能性があります。ここでは、前鋸筋の筋力低下により生じることや鍛えることで得られる効果を紹介したいと思います。
前鋸筋とは・・・
前鋸筋は、板状で胸郭の外側を被っている。前鋸筋の起始は上位10本の肋骨で、肩甲骨の内側円全体に停止する。動きは、肋骨を固定すると、前鋸筋は肩甲骨の内側縁を胸郭を平たく押しつける。前鋸筋の上部繊維は肩甲骨を外方にひき(外転)、上向きに回旋する。肩甲骨を前外方に引くことで肩甲骨を胸郭に固定する。腕で壁など何らかの抵抗に対して押す力を働かせると、筋繊維が収縮するのが見られる。腕立て伏せなどの動きは腕に過大な力が加わるので、前鋸筋が肩甲骨を胸郭に対して近づけ、正しい位置に固定してくれます。肩甲骨を固定すると、前鋸筋の下部繊維が中位肋骨を挙上し、吸気筋として作用する。
前鋸筋は、肩甲骨の安定性と自由度を出すために必要不可欠です。
いくつかの脂肪層が前鋸筋を肩甲下筋や胸郭から分離する。これによって肩甲骨の可動性が増加する。脂肪層は肩関節の複雑な動きにおいて重要な役割を果たす。
前鋸筋が弱くなると・・・
前鋸筋の機能が低下すると、肩甲骨の下方回旋、内転、肩甲骨の外転と屈曲の間の前傾を引き起こします。前傾した状態は、小胸筋の短縮につながり、肩甲骨の前傾と内転が増加します。肩が常に上がった状態になり、肩こりや猫背になりやすくなります。
正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書 理学療法士・医学博士 竹井仁著
前鋸筋低下で、肩鎖関節を軸とした肩甲骨の上方回旋が不十分な方の上肢挙上の場合、胸鎖関節を軸とした鎖骨の挙上に伴う肩甲骨の上方回旋が過度になり、肩をすくめるような肩甲帯の挙上が上肢挙上時に伴います。
運動過程の違いによる肩甲骨機能の変化 楠貴光
前鋸筋のトレーニングと効果
前鋸筋を鍛えることで得られる効果
・緊張がとれ肩こり・すくみ肩の改善
・不良姿勢の改善
・安定性が増し、肩の動きが改善
前鋸筋に力が入ることで、肩甲骨が正常な位置で保たれます。また、肩甲骨を肩から下げることができるので肩の力も抜け緊張の緩和により肩こりが改善(すくみ肩の改善)されます。また、肩甲骨が固定され安定するために肩の動きが良くなります。
前鋸筋トレーニング ①
1:腕立て伏せの状態になり、頭から足まで一直線にする。※お尻が上がったり下がったりしないように注意。
2:できたら片手を離し、姿勢は1の開始姿勢をキープする。片手を離すのが難しい人は、1の状態で床と手で押し合いこして姿勢は崩れないように意識しましょう。
前鋸筋トレーニング ②
1:四つ這い姿勢になります。
2:鍛えたい方と逆の手の下にタオルを敷き前後・左右へと動かしていきます。その際に鍛えている方は姿勢を保持できるように意識して行います。
前鋸筋トレーニング ③
1.開始姿勢:床に座り後に手をつきます。顎は引いた状態で行いましょう!
2:お尻を持ち上げ、背中から膝までまっすぐになるようにしましょう。お尻が下がっているのはだけです。しっかりお尻をあげて椅子になったイメージで行います。
ゆっくり繰り返し①②を行っていきます。呼吸は止めずに息を吐きながらお尻をあげ②の状態へ、息を吸いながら①のようにお尻を下ろしていきましょう。10回ゆっくり行うだけでも結構きついです。10回✖️3セット行いましょう。
まとめ
前鋸筋は、肩甲骨の安定性と自由度を出すために必要不可欠です。前鋸筋の起始は上位10本の肋骨で、肩甲骨の内側円全体に停止します。
前鋸筋の動きは、肋骨を固定すると、前鋸筋は肩甲骨の内側縁を胸郭を平たく押しつけます。前鋸筋の上部繊維は肩甲骨を外方にひき(外転)、上向きに回旋させます。肩甲骨を前外方に引くことで肩甲骨を胸郭に固定する働きもあります。
腕で壁など何らかの抵抗に対して押す力を働かせると、筋繊維が収縮するのが見られ腕立て伏せなどの動きは腕に過大な力が加わるので、前鋸筋が肩甲骨を胸郭に対して近づけ、正しい位置に固定してくれます。肩甲骨を固定すると、前鋸筋の下部繊維が中位肋骨を挙上し、吸気筋として作用します。
前鋸筋が弱くなると、肩甲骨の下方回旋、内転、肩甲骨の外転と屈曲の間の前傾を引き起こします。前傾した状態は、小胸筋の短縮につながり、肩甲骨の前傾と内転が増加します。肩が常に上がった状態になり、肩こりや猫背になりやすくなります。
鍛えることで、肩甲骨の位置が正常な場所に戻り、すくみ肩や肩こりの改善が期待できます。それに伴い、不良姿勢も改善されまます。また、肩甲骨が安定するため腕の動きも良くなります。姿勢をキレイに見せて快適な生活を送るためにも、前鋸筋を鍛えていきましょう!
参考引用文献:新動きの解剖学 ブランディーヌ・カレ・ジェルマン著 科学新聞社出版局/翻訳
カパンディ 関節の生理学 上肢 原著第6版 AIKAPANDJI 著 塩田悦仁 訳
図解関節・運動器の機能解剖上肢・脊柱編 J .CASTAING J .J .SANTINI 共著 井原秀俊、中山彰一、井原和彦 共訳