仕事やプライベートなど人と接するとさまざまな場面で『ありがとう』と感謝を伝える事があるのではないでしょうか?近年では感謝の言葉を伝えることが、心身に良い影響を与えると科学的にも証明されています。今回感謝の言葉を伝える、受け取ることでどのような効果があるのか調べたので皆さんにお伝えしていきたいと思います。
ありがとうの語源
「めったにない」「めずらしい」を意味する「有難し(ありがたし)」という言葉が語源である。「ありがとう」は有難しの連用形「有り難く(ありがたく)」がウ音便化したものである ウィキペディア
「ありがとう」の効果
感謝の言葉は受け取る側だけでなく、伝える側にも効果があることが研究結果で報告さています。
「ありがとう」を受ける側の効果
「ありがとう」という感謝を受けると、モチベーションが上がり活力になったりやりがいを感じたり自信につながります。そして「ありがとう」と言われることで、もっと認められたいし褒められたいと思ったりしませんか?
文献でも
問題行動が減少
感謝の表明については、問題行動の減少やさまざまなパフォーマンスとの関連を指摘する研究が例として挙げられる。Lockler et al.(2021)は職場での2週間にわたる感謝日記を用いた介入を行い、介入が問題行動を減らすことを示した。複数の研究が組織市民行動や支援行動に対する感謝感情の肯定的な影響を示している。
職場において感謝がワークエンゲイジメントと文脈的パフォーマンスに与える効果:応答局面分析を用いた検討 正木郁太郎
ワークエンゲイジメント(※1)と文脈的パフォーマンス(※2)に対する正の効果
研究結果より感謝を表明する経験と受け取る経験のどちらにもワークエンゲイジメント(※1)と文脈的パフォーマンス(※2)に対する正の効果が見られた。
職場において感謝がワークエンゲイジメントと文脈的パフォーマンスに与える効果:応答局面分析を用いた検討 正木郁太郎
※1)ワーク・エンゲイジメント」は、オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli 教授らが提唱した概念 であり、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」 (熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義。
引用;厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3_01.pdf
(※2)文脈的パフォーマンスとは、組織において中核となる職務が機能するための、広範囲の組織的・社会的・心理学的環境を支援する行動を指す概念である( Borman & Motowidlo, 1997; 池田・古川,2008; 田中,2012)。
ストレスの軽減効果
ストレス研究の先駆者であるハンス・セリエ(Hans Selye)は、 『現代生活とストレス(The Stress of Life)』(1963)の中で、他者から感謝を受けることによって、ストレスが大きく低減されたという個人的な経験を踏まえつつ、社会や対人関係における感謝の重要性に言及しているが、さらに近年のストレスの研究によると、感謝を受けるだけではなく、感謝することによってもストレスは低減するようである。前述のセリグマンらの研究(Seligman, et al., 2005)でも、「感謝の手紙を書いて届ける」ことをした被験者は、その後一ヵ月にわたって幸福感が高まっただけでなく、うつ傾向も低くなった。
感謝と幸福感 近年のポジティブ心理学の研究から 望月 文明
と述べられています。
『ありがとう』を伝える側の効果
「ありがとう」という言葉はポジティブ心理学でも用いられており情緒の安定性が図れ幸福感を感じることで何事にもポジティブ捉え人生に対する満足度が上がりやすいと言われています。また、やってもらって当たり前と思わずに「ありがとう」と伝えることは相手との関係性にも影響してくると思います。実際に職場で人手が足りずにお手伝いの依頼をされて手伝っても「ありがとう」と言われないと「手伝いに行ってるのにありがとうもない」と他の方が言っているのを聞いたり実際に感じたりすることがあります。信頼関係も悪くなり会話も少なく雰囲気も悪くなります。医療や介護分野で働いて14年になりますが、同じ施設内でもフロアにより「ありがとう」と言える状況があるところでは本当に雰囲気が明るく穏やかで笑顔も多く雰囲気が良いです。
文献からも
幸福感効果
この他にも人格の五因子論(Big-5 theory)との関係より、感謝は協調性(agreeableness)と正の相関があることや、臨床の研究では、 自己愛性人格障害の人は、通常の人と比べて、感謝や良心の呵責が極端に少ないことが報告されている(McCullough,et al.,2001)。これらの 結果をまとめると、日常においてよく感謝する人(感謝の気質が高い人)は、高い幸福感や人生に対する満足度を持ち、うつや不安に悩みにくいこと、自分が経験したことをポジティブに捉える人ということになる。
幸福感を研究しているリュボミースキー(Lyubomirsky, 2007)は、 著書 How of Happiness の中で、上記の二つの研究について紹介する とともに、「感謝の日記をつけること」と「感謝の手紙を書くこと」 を実際に彼女の研究室で試した結果を報告している。それによると、 感謝の日記は毎日つけるよりも一週間に一度のように間隔をあけた方 がより効果的であることや、感謝の手紙は相手に届けないでただ書くだけでも幸福感が高くなるようである。
感謝と幸福感 近年のポジティブ心理学の研究から 望月 文明
利他的行動の促進
これまで、社会心理学を中心に、ポジティブな気分を高めることにより、他人を援助する等の利他的行動が促進されることが、多くの研究により支持されているが、感謝することにも、そのような道徳的な行動を促進する効果が見られている。 マクロフとエモンズらの感謝の気質の研究では、感謝の心は個人の幸福感を高めるだけでなく、利他的行動を促進することが窺える。特にバートレットとデステノの研究からは、感謝の心が、直接お世話になった人への好意の返報性を超えて、利他的行動を促進することや、単に気分が良いというような状態以上に効果的であることなど、これまでの社会心理学における向社会的行動の研究にとっても、示唆に富む結果が得られているといえるだろう。 感謝と幸福感 近年のポジティブ心理学の研究から 望月 文明
ワークエンゲイジメント(※1)と文脈的パフォーマンス(※2)に対する正の効果
「ありがとう」を受け取る側同様に「ありがとう」を伝える側もワークエンゲイジメントと文脈的パフォーマンスに対する正の効果があったと言われています。感謝を飛び交う職場でも仕事効率が上がるだけでなく、コミュニケーションも活発になり職場の雰囲気も良くなると思います。
と述べられています。
ありがとう療法
上記のように『ありがとう』という言葉は、伝える側も受け取る側にもさまざまな良い効果をもたらしてくれます。
実際に『ありがとう療法』という方法があります。
「ありがとう療法」(Thank You Therapy)として,『ありがとう』という感謝のことば(四摂法の中の「愛語」の一つ)を毎日頻繁に(20回以上とか100回以上)他者に言うことによって,自他の情緒安定を図る心理療法の一つである」と定義されている(勝俣・橋本・木村・中嶋・岩田,2007)。
このありがとう療法の「ありがとう」の一言は,「コンピタンス心理学的にみると,総合的自己評価コンピタンスの構成成分である『情緒安定の 3A ( 愛情 Affection、受容 Acceptance, 承認 Approval)の要求』(Kanne,L.)を同時に充足する魔法の言葉である」という(勝俣,2007)。
ポジティブ心理学としての“ありがとう療法”の禅仏教における起源 加藤 博己
まとめ
『ありがとう』という言葉は、伝える側も受ける側も心身に良い影響を与えると科学的にも証明されています。
・問題行動の減少・ワークエンゲイジメントと文脈的パフォーマンスに対する正の効果・幸福感を高める効果・ストレス軽減・利他的行動の促進
これらの効果はモチベーション・生産性を向上させ仕事効率を上げるだけでなく、感謝を伝えられる環境は助け合う気持ちや思いやる気持ちが自然と持てるようになり信頼関係や絆をより深める事ができます。人間関係も良くなり、個人の能力だけでなくチームワークも高めることができます。仕事もプライベートも充実するためにも、相手に感謝の気持ちを伝えて快適ライフを楽しみましょう♪