リハビリ(PT・OT)の主な勤務先は医療機関になりますが、最近では介護・福祉施設で働くPT・OTも増えています。同じリハビリテーションでも、勤務先によって目的や得ることの出来る経験が違ってきます。
病院などの医療機関・医療施設や、介護老人保健施設、訪問看護ステーションのような介護施設、仕事の内容を解説したいと思います。また、実際に自分が働いた場所で感じたことなども一緒にお伝えできればと思います。
医療分野の仕事
病院などの医療分野ではリハビリ職の基本的な役目は、身体機能の改善・回復といったことが中心になります。急性期・回復期などで多少の違いはありますが、怪我や病気などで何らかの障害を負った患者さんの機能改善に努めながら、退院して職場復帰などを目指します。また、病院でのリハビリテーションは、医師の指導のもとで看護師や他の医療職と連携をとって医療チームとして業務を行う形が基本となります。
病院で得られるスキル・経験
リハビリテーション科や整形外科のみならず、神経内科や脳神経外科といったように多くの診療科や部署のある病院では、対象となる疾患も多岐に渡ります。様々な技術を学機会も多く、リハビリ職として成長に繋がります。また、他職種との連携が基本となるので、それぞれの立場や考え方を知ることで、多面的な思考を養うことができます。大きな病院であれば、同じリハビリ職の同僚がたくさんいるのでお互いに勉強をしあったり、先輩に頼んで教えてもらったりと経験の浅いリハビリ職にとっては心強いです。
急性期
急性期の場合は、脳卒中や骨折などの病気や怪我の治療がメインで治療と並行してリハビリが行われます。発症から大体2週間〜1ヶ月の期間で実施します。
急性期はリスク管理が重要になってきます。特に脳神経外科はリスク管理をしながらリハビリを進めていき、看護師やPT・OTで協力しながら行なっていました。
治療を行いながら早い段階で体を動かすことで、廃用症候群を防げるだけでなく、次のステージにスムーズに繋げる橋渡しになります。在宅なのか回復期か施設なのか、家族のニーズや回復状況で次の方向性を医療チーム・家族で話合い決めていきます。
回復期
急性期で治療が終え自宅や社会に戻ってからの生活を少しでも元の近い状態に近づけるためにリハビリテーションを専門に行います。1日最大3時間(PT・OT・ST合わせて3時間です。その方の状況で時間配分を決めていました)行い、在宅復帰・社会復帰を目指し行います。入院してすぐ自宅へ伺い、自宅を想定したリハビリを行えるように段差や自宅周辺、トイレ、お風呂など日常的な動作も含めた生活を見ます。そして退院前に再度自宅訪問し、実際に動作確認を行い、家庭内の改修や補助器具の導入、段差など家屋調査し環境調整を行います。また在宅での動作も難しい時は入院中に介護保険申請をして介護サービスの調整なども行います。
厚生労働省が疾患など条件や入院期間を定めており脳血管疾患や頸髄損傷などは最大180日、大腿骨や骨盤骨折は最大90日の入院期間が定められています。
維持期(生活期)
医療型療養病棟は、急性期の治療を終えても、引き続き医療提供の必要度が高く、病院での療養が継続的に必要な患者様を対象の医療機関です。
介護分野の仕事
病院とは違い、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、訪問看護ステーションといった施設で働くPT・OTの役割として、劇的な改善は望めない高齢者の方々の身体機能の維持や予防的なアプローチ(在宅生活を維持したり、難病の方の進行予防)を行なっていきます。
訪問リハビリなどにおいては福祉用具や自助具などを提供や介護者への指導、自宅を確認して環境を調整する提案や助言など、より自宅の生活に密着した仕事を行います。
介護施設で得られるスキル・経験
利用者の日常生活に密着した、長期的な関係性を気づいていくようなリハビリテーションが可能です。病院と比べて、一人ひとりにじっくりと向き合ったリハビリを行うことができます。身体機能訓練(運動療法)のみならず、身体機能を維持するための環境づくりとして、地域社会への参加を促すために自治体や企業と共に関わっていきます。医療施設同様も協力医や介護職員、看護師といった他職種との連携は不可欠です。
介護老人保健施設
厚生労働省によると、老健はリハビリテーションを提供する心身機能の維持・改善の役割を補う施設とされ在宅復帰や在宅療養支援を行うための施設です。回復期病棟に似ていますが、リハビリテーション提供時間が違い、短期集中加算が取れる方であれば週4回/20分実施できます。
退院して家庭に戻るまでの間利用されることの多い施設で、介護保険が適用される公的な施設です。介護・看護といったサービスに加え、医師のサポートも受けられます。回復期同様に入所前と退所前に家屋調査に伺い、入所前に自宅訪問することでその人の生活動作に応じてリハビリ提供できるだけでなく、自宅での動作確認や環境調整(手すりや改修、福祉用具の検討など)を行います。
ショートステイもあり、自宅での介護・看護生活が一時的に続けられなくなった場合に利用されます。受ける内容は入所サービスとほぼ変わりないです。
通所リハビリ(デイケア)
介護老人保健施設や病院、診療所などに通い、専門的なリハビリを受けることで、身体機能の維持や回復、認知機能の改善などを目指す施設です。
通所介護(デイサービス)
デイサービスは通所介護のことです、自宅でできるだけ自立した生活を送れるように支援します。主に他者との交流や身体機能の維持、家族の介護負担軽減などを目指す施設です。
訪問リハビリ
病院、診療所や介護老人保健施設でリハビリ職が自宅を訪問し、心身の機能維持・回復、日常生活の自立を支援するために行うサービスです。回復期から退院するときに不安が強い人などが実際に退院した後に在宅生活の動作が行えているか確認し、日常生活動作だけでなく買い物や家事動作、外出練習なども行います。介護保険の方が対象です。
訪問看護でのリハビリ
主治医の指示書のもと、看護師やリハビリ職が自宅に訪問し看護(療養上の世話や診療の補助など)及びリハビリテーションを行うことです。訪問リハビリと変わりはないですが、3ヶ月に一回は看護師のモニタリングが必要になります。また、厚生労働省の定める疾病等に該当する場合や急性増悪などにより、特別指示がある場合は訪問回数と1週間の訪問回数の上限が適応されません。進行性の難病がある方は訪問リハビリは利用できず、訪問看護でのリハビリを医療保険で受けることができます。
介護施設
生活期(維持期)における心身機能や日常生活動作、生活機能の維持、QOL(クオリティオブライフ)を向上されるためにリハビリを行われます。維持と生活の質向上を目的として行われます。
勤務先で給料は変わるのか?
基本的にリハビリ職の給料に関しては、規模の大きい病院の方が安定していると言われています。しかし病院勤務は基本給が低く、資格手当などがプラスになります。厚生労働省の調査によると、規模の小さい事業所の方が若干高いと言う結果になっているそうです。私は訪問看護でのリハビリ、老健で働いた経験がありますが病院勤務の時より基本給もよく、ボーナスも病院勤務時に比べよかったです。どちらも母体が病院だったからかもしれませんが、、、。ハローワークなどの求人情報をみた感じだとその地域にもよると思いますが、事業所の母体が小さいところは基本給が少なく、ボーナスがないところが多かったイメージです。
NPO法人や訪問看護ステーションなどでは、病院などにないインセンティブという制度があるようで、より高い年収が実現可能となる場合もあります。
訪問看護ステーションで働いていた時は、上司に交渉して営業などで利用者数が増えたら給料UPしてくれると言われて頑張ったことがあります。実際利用者数が上がって少しではありますが給料UPしたのでインセンティブ制度があるかなど調べて勤務先を決めるのもアリかと思います。
病院と介護施設、どちらで働くべき?
実際に働いてみて、新卒や経験の浅いPT・OTの方は病院で働くことをオススメします。勉強会や学会などの勉強会資料作りだけでなく、基礎的な部分をしっかり学べるし大きな病院であれば先輩に色々教えてもらえます。同期も多いので心強く、一緒に勉強会に参加したり勉強するのにモチベーションを保てます。それだけでなく、いろんな分野の基礎からリスク管理だけでなく、OPE見や術式なども知ることができます。リハビリ職としての第一歩を踏み出す上で、成長につながる経験を多く積むことができます。総合病院などの大きい病院では、満遍なく学ことができるので方向性(整形外科一本・スポーツに進みたいなど)決まってない方は大きな病院に勤務することをオススメします。
自分は回復期病院に新卒で入社しました。系列病院をいっぱい持ってたので、「急性期病院に勉強してこい」と1年ではありますが転勤して脳神経外科に配属されましたが本当にためになったし、急性期に初めから行ってればもっと基礎的な部分を学ぶことができたなぁと思いました。
総合病院だと急性期〜維持期まであるところも多いので経験を積む、勉強を満遍なくやりたい!って方には総合病院で始めは働くことをオススメします。
介護施設や通所、訪問などの介護分野は一人一人の利用者の日常生活までしっかりとサポートしたいというPT・OTの方は介護や福祉施設で働くことで、そのようなリハビリテーションを可能となります。
介護分野は老健などで働くと介護分野で自助具や車椅子、シューティング・ポジショニングなどに詳しくなると思います。訪問や通所では長く関わることが出来ます。また、介護施設・訪問などは進行性の難病の方と関わることも多いです。ガツガツ運動を行うというイメージよりもその方に合わせて工夫をしながら関わっていきます。もちろん利用者さんの状況でリハビリも変わってきます。