リハビリ職について臨床場面や介護場面などでも拒否を経験した方も多いはずです。
しかし、自立した生活を送れるようにするには、リハビリは必要不可欠です。
リハビリは嫌がる人も多く、「歳やからもういいの」「運動はしたくない」などとリハビリをしたい人ばかりではありません。
リハビリ拒否に悩むリハビリ職の方、介護スタッフの方はぜひ参考にしてみてください。
リハビリ拒否
リハビリを受けるのは医師が必要と判断した場合に限られ、家族が希望されることも多いでしょう。また、病院などでは早期離床により廃用症候群予防などですぐにリハビリを開始すると思います。実際に現場では本人に拒まれることも多く、スムーズに進められいないこともあります。
拒否の理由
身体的な理由
リハビリの必要性は理解しているも、体がついていかないというパターンです。例えば、痛みが出やすい部分があったり倦怠感があったりすると、少し体を動かすだけでも大きな負担になります。またやりたくない気分もあります。身体が思うように動かせない原因に、栄養不足や疾病が隠れていることもあるので注意が必要です。
精神的な理由
身体的に問題はないものの、高次脳機能障害や認知症などリハビリに対して意欲がわかないというのもよくある理由です。
・なぜリハビリが必要なのか分からない
・運動が好きじゃない
・リハビリがきつい、つらそう、不安・・・など
本人様の気持ちを尊重せずに、家族がリハビリを希望した場合に多いパターンです。
高次脳機能障害の1つは病識の低下にあります。病識の低下とは、自分の病気や自分の身体的状況の理解が不十分なことを言います。例えば、麻痺があり動かないのに動くと行ったり、歩けないのに歩けるといったりすることです。
また、急性期などでは自分の状態を受容できておらず受け入れるのに時間がかかるケースもあるようです。
急性期で働いたときはあまり拒否はなかったように思います。介護分野(訪問リハビリ・施設・通所)や回復期では拒否されることもありましたが、工夫をすれば拒否されることも無くなります!
経済的な理由
経済的に余裕がないことを理由に、利用者さん本人がリハビリを拒否することもあります。実際に、リハビリ開始前にケアマネージャーなどが経済的状況を踏まえつつ依頼をするのですが、本院様の不安を拭いきれずリハビリや介護へ踏み切れないこともあります。
この場合は、隔週や月一程度に訪問ペースや回数を減らして対応しましょう。
訪問リハビリで関わった際に経済面で拒否される方がいらっしゃいました。回数を減らして、まずは受け入れてもらうところからケアマネさんや看護師と連携し行っていました。
リハビリ拒否時の対応
拒否の対応としてまずすべきことは、原因を探ることです。
身体面での拒否の方への対応
身体機能面の問題を改善することが基本となります。
体調不良や痛みのある場合は、医師や看護師と相談して治療方針や薬剤の再検討、生活リズムの見直しを行います。整形の場合は、術後の痛みによって離床やリハビリが進まなくなることもあるので、主治医と相談し、薬の量や投薬時間の調整を行ってもらいましょう。
また日中傾眠傾向の方もいます。急性期の場合、症状が安定しないことと、生活リズムが崩れてしまうことが原因として考えられます。バイタルに問題がなければ、介入時間をできる限り分散させて、リハビリがない時間帯は自主練習などを行って生活リズムを整えましょう。
精神面での拒否の方の対応
⬛︎ 高次脳機能障害など脳の病気で病識の低下に対してはさまざまなアプローチ方法がありますが、本人様自身に気づいてもらうことが大切です。
鏡を使用して座位や立位での姿勢を確認したり、歩けると訴える利用者さんに実際に歩いていもらったりしてフィードバックを行うことで、本人様自身に病態理解をつなげることができます。
繰り返し行っていくことで、ご自身の身体状況の理解にもつながり、リハビリの必要性などにもつながることができます。
⬛︎ 精神的な訴えの場合には、何が辛いのか、どんなことに困っているのかを早く聞き出し、解決したい気持ちを抑え、まずは傾聴して患者さんの思いに寄り添ってその方の解決策を考え、解決方法を実施していくことが大切です。
⬛︎ 認知症患者さんへの関わり
高齢化社会となり、入院患者さんや介護施設では高齢者の方が80歳後半から90歳代の方が増えています。記憶や見当識の低下といった認知障害を持っている方も多くなっています。病気や疾患があっても必要な訓練はやらなくてはいけません。患者さんや利用者さんの情報提供の方法を工夫が必要です。”リハビリ”となると、抵抗してしまう方には、生活の流れの中で取り入れて訓練を意識されて関わったりします。文献でも訓練拒否する患者さんにおいて日常生活動作の場面から少しづつ介入し、必要な動作を認識していただくことで拒否なく行え理解を得たことで在宅復帰できた述べていました。※1
訓練拒否する患者さんにおいて日常生活動作の場面から少しづつ介入し、必要な動作を認識していただくことで糸口をみつかることができた。患者さんが納得できる状況を病棟と連携して築けた事、問題点を事前に話し合い家族を介して説明、理解を得たことで自宅復帰を可能にした。※1
訓練拒否を生じた患者様の在宅復帰までの試み
強い拒否や暴言、暴力等認められ、理学療法を進めていくことが困難であったし2症例をPT二人で介入したり、家族にも参加してもらったり、時間帯を変えるなど工夫をして関わっていくことが大切です。※2
一般的に強い拒否や暴言、暴力など見られる認知症患者の理学療法は進めることが難しいとされいてる。その場合、ゆっくり繰り返すや暴力行為の背景を探っていくなどが必要と言われているが、現実うまくいくとは限らない。そのため現場では経験から患者に合わせて対応すしているという現状。強い促しは人権侵害や逆既往化にもなり得ることから、実践で用いるときは慎重に対応が必要。認知症があり拒否が強く見られる患者の理学療法では「二人が同時に関わる」「強く促す、自発動作に合わせる」と言った介入が効果的であると示唆された。認知症の症状は複雑で理学療法を行う上で多様な工夫や手段が必要である。※2
強い拒否がみられた認知症高齢者患者2症例の理学療法経験から 第51回近畿理学療法学術大会 中田 加奈子、池田 耕二、山本 秀美
また、文献より拒否の強い症例おいても注目・賞賛することで意欲向上につながり効果的であったと述べていました。※3
結界よりリハビリ拒否の強い症例においても注目・賞賛が意欲向上に効果的であったと考える。患者一人一人に合わせた関わり方や介入方法を検討していく必要がある。※3
介入困難な症例に対し賞賛が有効であった一例 小菅 みなみ 渡部 友宏
利用者さんや患者さんの考えや心理を探る
「なぜ拒否するのか」について理解することから始めましょう。利用者さんの考えや気持ちを知りたい場合は、表情や声にヒントがあります。表情が硬いのか、笑顔の有無や声のトーン、反応の大きさなどから利用者さんの心理を読み解きましょう。
表情や声に意識を向けることで相手に「あなたに興味がある」という気持ちを示すことができ、利用者さんの好印象につながります。
本人様の意思を尊重する
リハビリや介護は利用者さんが主体となって行います。そのため、スムーズにリハビリが進まなかったとしても、無理にこちらの要望を押し通してはダメです。利用者さんの意思決定を尊重するためにも、何かを決めるときや始める時には先約しを提案してみるのもいいかと思います。
挨拶やたわいもない話を欠かさず続ける
リハビリを拒否する利用者さんに積極的になってもらうためには、時間をかけて心の距離を縮め、信頼関係を気付かないくてはいけません。そのために、姿を見かけたら必ず声掛けをするようにしましょう。その際に目線を合わせること、相手の気持ちに共感することも忘れずに根気強く声掛けを続けることで、反応もだんだんと変わってきます。
また、趣味や得意なこと、興味のあることを会話の中で探ってみるのもいいと思います。心の距離が縮まるだけでなく、リハビリを高めるきっかけにもなります。ご家族様にも病気になる前はどんなことをしていたのかなどを聴衆しておくのもいいと思います。
「リハビリは辛いもの」というマイナスイメージを持つ方も多いので、利用者さんが好きなことと結びつけながらさりげなくアピールするのもモチベーション向上につながると思います。
リハビリ拒否への対応は利用者さんの主張に目を向けること
リハビリ拒否の裏には、利用者さんの強い主張があることがほとんどです。まず、相手の立場になって考え理解することが大切になります。
本人様の意向も聞きながら、何が原因で拒否しているのかを理解しそれに対して対応していきましょう。認知症の方などには時間帯を変える、人を変える、運動と言わずに散歩やトイレなどのタイミング、家族の協力、趣味や興味のある活動を通して関わってみるなど工夫をしていきましょう。楽しくリハビリを行なってもらえるように、紹介したリハビリ拒否への対応方法をぜひ実践してみてください。