運動している方であれば、必ずセルフケアとして行なっているストレッチ。これも、やり方を間違えれば怪我につながったり意味がなかったりします。運動前と後でどうしたらいいのかここでは紹介したいと思います。
結論!
ズバリ結論は、
筋力やパワー系の運動をする人であれば動的ストレッチがオススメです。
柔軟系の運動であればスタティックストレッチ(静的)ストレッチでも良いと言われています。
運動後はスタティックストレッチで、ゆっくりストレッチしてリラックス効果や緊張緩和、疲労回復を図ることをおすすめします。
下記で詳しくエビデンスも踏まえ説明したいと思います。
ストレッチとは?
スポーツや医療の分野におけるストレッチングとは、筋肉を良好な状態にする目的で筋肉を引っ張って伸ばす行為。筋肉の柔軟を高め、可動域を広げるほか、呼吸を整えたり、精神的な緊張を解けるという。 ウィキペディアより
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、可動域の拡大や怪我の予防、疲労回復などで行なっている方が多いのではないでしょうか?また、現代人であれば同じ姿勢を取り続けることで筋肉が緊張状態になってしまうので、筋緊張の緩和やリラクゼーション効果なども期待でき治療現場はもちろん、スポーツ選手、部活や運動をしている方は運動前後のセルフケアで行なっている方も多いと思います。
ストレッチ種類
ある方向に関節を動かしながら筋肉を縮めたり伸ばしたりすることを繰り返し筋肉を刺激しながら柔軟性を高め可動域を広げるダイナミック(動的)ストレッチング」
伸ばしたい筋肉をゆっくりと一定方向に伸ばしその状態でしばらく静止する「スタティック(静的)ストレッチング」に分けられます。
ストレッチの目的
スタティックストレッチ:筋肉の緊張を和らげ、柔軟性の向上、可動域の拡大効果。深呼吸を行いながらすることで、副交感神経を刺激してリラックス効果もあります。
ダイナミックストレッチ:運動を模倣した動作を行えば協調性を高めたり、伸ばしたい筋肉と反対の作用をもつ筋肉を収縮させて伸ばしたい筋肉の柔軟性を高めたり、90秒以上の行うことにより筋力が向上していると報告もされています。そのためうぉミングアップで実施している方が多いと思います。
ストレッチ後の筋力の変化
下記文献の結果からスタティックストレッチは90秒以上を超えるストレッチをした後筋力や筋パワーの低下が明らかとなると報告されています。ダイナミックストレッチングに関しては、長時間のストレッチングで筋力の向上が報告されておりパフォーマンスが低下させないと言われています。また、ダイナミックストレッチングもステティックストレッチングも同等の柔軟性の改善が得られダイナミックストレッチングをウォームアップに取り入れるのは合理的と言われています。
筋力や筋パワーに関してはストレッチングにより低下するとの報告が多くみられる 2)3)。ストレッチングが筋力や筋パワー に及ぼす影響を調べた 42 論文(総計 1,606 人)をレビューし た Behm 4)らによると,これらの論文中で測定された等尺性 筋力,等速性筋力,1 RM などの指標のうち 6 割以上で筋力が 低下すると報告しており,“有意差なし”や“改善”を報告し ているものよりはるかに多かった(図 1)。報告された筋力の 低下率は様々であるが(平均 ‒ 6.9%)5),低下率が大きいものでは ‒ 19.1% 6)にもなる。ストレッチングの持続時間を比較すると,ひとつの筋群に対するストレッチング時間が 90 秒を超えると,それ以下と比較して筋力の低下があきらかとなると報告されている。
ダイナミックストレッチング 8)においても時間と等 尺性筋力,等速性パワー,1 RM の関係についてのレビューが あり,スタティックストレッチングの場合とは異なり,ストレッチングによる低下は見られず,長時間のストレッチングでは筋力が向上するとしている 4)。このレビューによると,90 秒以上のダイナミックストレッチングによる筋力の向上(7.3% ± 5.3)は,90 秒以下(0.5%± 2.3)と比較して有意であったとしている。
ダイナミックストレッチングに関しては, パフォーマンスを低下させない,あるいは向上させると報告 されている。McMillian らの研究によると,10 分のダイナミッ クストレッチングにより,シャトルラン速度やボール投げ, ステップジャンプが有意に改善した15)。ジャンプに関しても, ダイナミックストレッチング実施によるジャンプ高の低下はみられないとする報告がみられ 16‒18),ジャンプ高を低下させるとのスタティックストレッチの報告とは異なる。ダイナミック ストレッチングの筋力やパフォーマンスへの影響を調べるうえで,時間以外に重要なのはストレッチング強度である。ダイナミックストレッチングの強度に関する表記について一致 した方法はなく,強度に関して触れていない研究 19)20)もあるが,周波数として表記している研究もある 5)6)21)。
ダイナミックストレッチングでもスタティックストレッチ ングと同等の柔軟性の改善が得られるといわれており 22)23), パフォーマンスや筋力も向上する可能性のあるダイナミックス トレッチングをウォームアップに取り入れるのは合理的なことであろう。
Behm ら 4)は,速い動きや爆発的な動きが必要な場合,少しのパフォーマンスの低下も問題となる状況ではスタティックストレッチングの実施には十分な注意が必要であること,スタティックストレッチングによる関節可動域の改善はあきらかなため,特に静的柔軟性が要求されるス ポーツや健康増進のためにはスタティックストレッチングもよいこと,特に長時間のダイナミックストレッチングは神経筋システムを賦活化させ,パフォーマンスを向上させると結論づけている。
※ストレッチングのエビデンス 市橋則明 理学療法学 第 41 巻第 8 号 531 ~ 534 頁(2014 年)
まとめ
ストレッチには大きく分けて2つ
・スタティックストレッチ(静的)とダイナミックストレッチ(動的)があります。
・静的ストレッチも動的ストレッチも柔軟性を高め、可動域の拡大を図ることができます。
・静的ストレッチは伸ばしたい筋肉をゆっくりと一定方向に伸ばしその状態でしばらく静止することで柔軟性を高め、可動域範囲の拡大を得られる。さらに深呼吸も行いながらすることでリラックス効果も得られる。
・動的ストレッチはある方向に関節を動かしながら筋肉を縮めたり伸ばしたりすることを繰り返し筋肉を刺激しながら柔軟性を高め可動域を広げる。90秒以上行うと筋力向上も得られる。
・運動前のウォーミングアップでは、ダイナミックストレッチを行うことでパフォーマンスを上げる効果が期待できる。
・静的ストレッチは、筋力や筋パワーの発揮を低下させてしまうので運動前は不向きであるが、運動後のケアでは疲労回復効果も期待できるので運動後におすすめ。